「絶滅した」と思われ、何十年、時には100年以上も姿を確認されなかった生物が、ある日突然見つかることがあります。
それほど長い間見つからなかったのなら、再発見にはカメラトラップやDNA解析のような特殊な技術が必要だったのでしょうか。それとも、意外に従来型の調査や偶然から見つかっているのでしょうか。ロザニカでは今回、再発見前の最後の確実な記録年、再発見年、そして再発見に至った経緯を確認できた動物17例を、同じ基準で比較しました。
最後の記録から再発見までの「空白期間」は28~133年。中央値は84年、平均は約81.9年でした。ところが17例を並べてみると、当初想定していた「長く消えていた生物ほど、特殊な技術で見つかる」という単純な傾向は確認できませんでした。むしろ目立ったのは、別の調査をしていて偶然見つかったケースや、地域住民から得た情報が再発見の入口になったケースです。
100年以上科学的記録が途絶えていたのに、最終的にはごく普通のフィールド調査で見つかった生物もいました。今回は「何年消えていたか」と「どうやって見つかったか」を分解し、生物の再発見が実際にはどのように起きているのかを調べます。
※本稿では便宜上、「絶滅したと思われた生物」という表現に、正式に絶滅と判断された種だけでなく、絶滅の可能性が指摘された種や、長期間科学的記録が途絶えていた「lost species」も含めています。lost speciesについては「野生で10年以上記録されていない」とする定義も提案されています[1]。
100年以上“消えていた”生物もいた
今回の17例について、
空白期間 = 再発見年 − 最後の確実な記録年
としてロザニカ編集部が再計算しました。
これは「その期間、本当に絶滅していた」という意味ではありません。
あくまで、科学的に確認できる記録が途切れていた期間です。
最長だったのはスリランカのヒキガエル Adenomus kandianus で、最後に記録された1876年から2009年の再発見まで133年。原著論文でも、1876年の記録以降長期間確認されていなかったことが報告されています[2]。
ニューカレドニアのボクールトカゲ Phoboscincus bocourti も、1872年ごろに採集された標本を最後に記録が途絶えていました。ところが2003年、ニューカレドニアの小島で行われていた遠征中に予想外の形で再発見されました[3]。約131年の空白です。
パプアニューギニア固有のクロエリキジバト Otidiphaps insularis は、1896年の標本以降、126年間科学的に記録されていませんでした。2022年の調査では、先住民・地域住民から得た知識をもとにカメラトラップを設置し、生存を確認しています[4]。2026年に公表された査読論文でも「126年間科学から失われていた」とされています。
さらにニューギニアオオミミコウモリ Pharotis imogene は、1890年に採集されて以来、約122年間記録がありませんでした。それが2012年、パプアニューギニアで行われていた別のコウモリ調査の罠に入ります[5]。オーストラリア博物館によると、調査者が罠を通常どおり確認した際に捕獲されていた個体でした。
図1:今回調査した17例は何年間“消えていた”のか

ロザニカが今回確認した17例では、空白期間は次のようになりました。
17例の中央値は84年でした。
これだけ長期間見つからなかったのなら、再発見には特殊な技術が不可欠だったようにも思えます。
実際にはそう単純ではありませんでした。
100年以上消えていた6例でも、特殊技術で確認されたのは1例だった
まず問題になるのが、「特殊な方法」とは何かです。
調査を始めた当初は、再発見方法を「通常」と「特殊」に分ければ比較できると考えていました。
しかし資料を実際に読むと、この分類には問題があります。
例えば、
地域住民から「この辺りにいる」と聞く → 研究者が現地へ行く → 普通の罠で捕獲する
という再発見があったとします。
この場合、「地域住民から得た情報」は再発見のきっかけですが、「罠」は確認方法です。
反対にカメラトラップや環境DNA(eDNA)は、存在を科学的に確認するための検出技術です。
両者を単純に「特殊な方法」という一つのカテゴリーに入れると、意味の違うものを混ぜることになります。
そこで今回は、
①何が探索・発見の起点になったのか
と、
②最終的に何によって生存が確認されたのか
を分けました。
そのうえで②について、カメラトラップやeDNAのような遠隔・分子的検出を「特殊技術」として集計しました。
結果は、
通常の直接観察・捕獲など:13件
カメラトラップ・eDNA:4件
でした。
さらに、それぞれの空白期間を比べます。
| 最終確認方法 | 件数 | 空白期間中央値 | 平均 |
|---|---|---|---|
| 直接観察・捕獲など | 13 | 86年 | 約84.0年 |
| カメラトラップ・eDNA | 4 | 73年 | 75.0年 |
ロザニカの今回の集計では、特殊技術を使った4例のほうが、空白期間が長いという結果にはなりませんでした。
むしろ中央値だけなら、従来型の方法で確認された13例のほうが長くなっています。
空白期間別に分けても同様です。
| 空白期間 | 全事例 | カメラ・eDNAによる確認 |
|---|---|---|
| 20~39年 | 1 | 1 |
| 40~59年 | 4 | 0 |
| 60~99年 | 6 | 2 |
| 100年以上 | 6 | 1 |
100年以上記録がなかった6例のうち、カメラトラップやeDNAによって最終確認されたのは1例だけでした。
残る5例は、直接観察、捕獲などによって確認されています。
もちろん、この17例から「特殊技術は必要ない」と結論することはできません。
今回調べたのは、すでに再発見に成功した事例だからです。
カメラトラップを100回仕掛けて1回成功したのか、従来型調査を100回して1回成功したのかといった「失敗した探索」の母数は分かりません。
したがって比較できるのは、再発見に成功した17例の中で、どのような方法が最終確認につながったかだけです。
それでも、「長期間見つからなかった=高度な技術でなければ発見できない」という単純な関係が、今回の事例群では見られなかったことは分かります。
実際、ボクールトカゲは約131年間記録がなかったにもかかわらず、2003年の遠征で予想外に発見されました[3]。ニューギニアオオミミコウモリも約122年ぶりの再発見でしたが、特殊なDNA探索で探し出したわけではなく、通常のコウモリ調査で設置した罠に入った個体でした[5]。
図2:空白期間が長いほど特殊な方法で見つかるのか

再発見の入口で最も多かったのは「別のことをしていた」
では、生物たちは何をきっかけに再発見されたのでしょうか。
今回の17例について、再発見につながった主な入口を一つずつ分類した結果は次のとおりです。
| 再発見の主な起点 | 件数 |
|---|---|
| 対象種を狙った探索 | 5 |
| 別目的の調査・巡回など | 7 |
| 地域住民・先住民等の情報 | 4 |
| eDNAによる対象種探索 | 1 |
最も多かったのは、別目的の調査や通常業務の中で見つかった7件でした。
「絶滅した生物を探す大規模プロジェクト」が最多だったわけではありません。
例えばニューギニアオオミミコウモリが捕獲された2012年の調査は、この種だけを狙った探索ではありません。通常のコウモリ調査用の罠に、研究者たちがすぐには正体を特定できない個体が入っていました。その後、博物館標本との比較によって、1890年以来確認されていなかった Pharotis imogene と判明しました[5]。
ジャクソンキノボリサンショウウオ Bolitoglossa jacksoni も、計画された探索隊が発見したわけではありません。1975年以来42年間確認されていなかったこのサンショウウオを2017年に見つけたのは、グアテマラの保護区で働くレンジャーでした。Re:wildによれば、レンジャーが昼休み中に偶然個体を見つけています[15]。
ヒガシシナアジサシも興味深い例です。2000年、台湾の馬祖列島でオオアジサシの繁殖地を撮影した映像を編集していた際、別の小型のアジサシが映っていることに気づき、確認の結果ヒガシシナアジサシだと判明しました。1937年以来63年間確実な記録が途絶えていた種でした[16]。
ここから見えるのは、再発見が必ずしも「見つけるための技術」の問題だけではないということです。
人がどこを調べるか。何を調べているか。そして、目の前に現れた未知の個体を見逃さず、過去の標本や記録と結びつけられるか。
そうした調査活動そのものの広がりも、再発見を左右しています。
最新技術より先に、地域の人が知っていたケースもある
一方、近年の再発見で存在感を増しているのが、カメラトラップやeDNAです。
ただし、ここでも「最新技術だけで発見した」と単純化すると実態を見誤ります。
アッテンボロー・ミユビハリモグラ Zaglossus attenboroughi は、1961年に採集された標本以降、科学的な確認記録が途絶えていました。
2023年、インドネシア・パプア州のサイクロプス山地に設置されたカメラトラップによって、62年ぶりに写真と動画による科学的証拠が得られました[9]。
しかし、そのカメラを山中へ無作為に置いたわけではありません。
研究チームは先住民・地域住民から得た目撃情報を調査し、それをもとにカメラの設置地点を選定していました。2022年の調査では撮影できず、2023年には73台のカメラトラップを展開。最終的に6台のカメラが、複数個体とみられるハリモグラを記録しました[9]。
つまり、
地域の知識 → 探索場所を絞る → カメラトラップで科学的に確認する
という複数段階の再発見です。
クロエリキジバトもよく似ています。
研究者らはパプアニューギニアのファーガソン島で地域のハンター29人に聞き取りを行い、最近この鳥を見たという人物の情報をもとにカメラトラップを設置しました。その結果、1896年以来科学的に記録されていなかった鳥の撮影に成功しています[4]。
ここではカメラが決定的な「証拠」を作りました。
しかし、どこにカメラを置くべきかという問題を解いたのは、地域に蓄積されていた知識でした。
「科学にとって失われていた」と「その土地の人々にとって存在が知られていなかった」は、同じ意味ではありません。
アッテンボロー・ミユビハリモグラの研究者自身も、科学的な証拠が62年間途絶えていた一方で、地域住民からはその間にも目撃情報が報告されていたことを指摘しています[9]。
再発見を語る際には、「誰にとって失われていたのか」を区別する必要があります。
eDNAは、本当に「見えない生物」を見つけた
今回の17例の中で、技術そのものが再発見の性質を大きく変えた代表例が、南アフリカのデ・ウィントンキンモグラ Cryptochloris wintoni です。
この動物は砂の中を生活するため、地上で姿を見ること自体が難しく、1937年以来80年以上確認されていませんでした。
そこで研究チームが利用したのが環境DNA(eDNA)です。
生物は皮膚片や毛、体液などのDNAを環境中に残します。研究者は南アフリカ西海岸の土壌からDNAを採取し、塩基配列を分析。その結果、デ・ウィントンキンモグラの存在を示すDNAを検出しました[8]。研究論文では、土壌eDNAによって同種の生存を結論づけています。
これは、人間が動物そのものを目撃しなくても「そこに存在した」ことを検出できる方法です。
地下生活者、夜行性、生息密度が極端に低い生物など、従来の目視調査では見つけにくい種に対して、こうした技術の重要性が高まる可能性は十分あります。
ただし、今回の17例だけを見る限り、こうした最新技術が「長期間消えていた種ほど多く使われている」とまでは言えませんでした。
「消えていた長さ」より「再発見された時代」が効いている可能性
今回、カメラトラップまたはeDNAによって生存が確認された4例は、
- 銀背マメジカ:2018年
- デ・ウィントンキンモグラ:2021年の試料採取
- クロエリキジバト:2022年
- アッテンボロー・ミユビハリモグラ:2023年
と、すべて近年の再発見でした。
銀背マメジカではベトナムでカメラトラップ調査が実施され、1990年以来約30年ぶりとなる野生個体の写真が得られています[13]。
この結果には大きな交絡要因があります。
例えば、1948年に再発見されたニュージーランドのタカヘに、現在のようなデジタルカメラトラップやeDNAを使うことはできません。
タカヘは1898年以降確実な記録がなく、1948年にフィヨルドランドのマーチソン山地で再発見されました。ニュージーランド自然保護局の資料でも、1898~1948年の間は絶滅したと考えられていた時期があったことが確認できます[11]。
つまり、
空白期間が長い → 特殊技術が必要
という関係を検討する際には、
再発見された年代が新しい → そもそも新技術を利用できる
という影響を切り分けなければなりません。
今回の17例では、そこまで統計的に分離できるだけのサンプル数はありません。
したがって「特殊技術ほど長期間失われた種を再発見しやすい」とも、「特殊技術は関係ない」とも結論できません。
ロザニカの今回の集計から言えるのは、少なくとも空白期間だけでは、どんな方法で再発見されるかを説明できなかったということです。
図3:再発見年代と特殊技術

「140年ぶり」が、調べると126年になった
今回の調査ではもう一つ、「○年ぶり」という数字そのものにも注意が必要だと分かりました。
クロエリキジバトは、2022年の再発見時に「140年ぶり」と広く報道されました。
これは1882年に採集された標本を基準にすると計算できます。
ところが、その後まとめられた研究では、1896年にも標本が採集されていたことが確認されています[4]。
したがって、
2022 − 1896 = 126年
です。
2026年に公開された査読論文も、この再発見を「126年間科学的記録がなかった」としています。
同様にソマリハネジネズミ Galegeeska revoilii も、「約50年ぶり」と説明されることがありますが、研究論文では1970年代初頭まで標本記録があります。今回のデータでは1973年を最後の確実な記録とし、2019年の調査で得られた標本までを46年と計算しました[12]。この再発見では、生体標本だけでなくDNA配列も取得され、生存だけでなく既知の分布域がジブチまで広がることも示されました。
「140年ぶり」「100年ぶり」という数字は強い印象を与えます。
しかし、古い博物館標本や論文を遡ると最後の記録年が変わる場合があります。
そのため今回は、ニュース記事に書かれた年数をそのまま集めるのではなく、確認できた最後の記録年と再発見年を揃えて計算し直しました。
この再計算も今回の調査で作成した独自データの一つです。
再発見は「最新技術か偶然か」の二択ではなかった
今回確認した17例では、空白期間の中央値は84年でした。
しかし、長期間科学的記録が途絶えた生物ほど、カメラトラップやDNAのような特殊技術で見つかるという傾向は確認できませんでした。
100年以上空白のあった6例でも、特殊技術によって最終確認されたのは1例です。
一方、再発見の入口として最多だったのは、17件中7件の別目的の調査や巡回などでした。
ここから見えてくるのは、再発見が、
最新技術による探索
対
単なる偶然
という二択ではないことです。
別の生物を調べる調査、保護区の日常的な巡回、過去の標本との照合、地域住民の知識、カメラトラップ、DNA解析。
実際の再発見は、こうした異なる要素の組み合わせで起きています。
そして最新技術が威力を発揮した事例でも、その前に「どこを探すべきか」という人間側の知識が必要だったケースがあります。
今回の17例からは、
長く消えていたから見つけ方が特殊になるのではなく、その生物の生態、調査される場所、そこに暮らす人々の知識、そして再発見された時代によって、見つかり方が変わっている可能性
が見えてきました。
ただしこれは、17例という限定された成功事例から得た結果です。
探索したものの発見できなかった事例は含んでおらず、分類群や生息環境も統一されていません。そのため、どの探索法が最も「成功率が高い」のかを今回のデータから判断することはできません。
なお、より大規模に四肢動物の「失われた種」と再発見種を分析した2024年の研究では、424の再発見種を含むデータセットが構築され、再発見には分類群、生態、環境、探索努力など複数の要因が関係することが示されています[1]。この研究も、単純に「長く失われたから見つからない」と説明できる現象ではないことを示しています。
100年以上姿を消した生物が、別の調査中の罠に突然入ることもある。
一方で、人間の目ではほとんど発見できない地下性動物が、土の中に残したDNAによって見つかることもある。
「絶滅したと思われた生物は、どうやって戻ってくるのか」。
今回調べた17例を見る限り、その答えは一つではありませんでした。
参考文献
[1] Lindken T, et al. What factors influence the rediscovery of lost tetrapod species? Global Change Biology. 2024;30(1). doi:10.1111/gcb.17107.
[2] Wickramasinghe LJM, Vidanapathirana DR, Wickramasinghe N. Back from the dead: The world’s rarest toad Adenomus kandianus rediscovered in Sri Lanka. Zootaxa. 2012;3347(1):63–68. doi:10.11646/zootaxa.3347.1.3.
[3] Ineich I, et al. Is Bocourt’s Terrific Skink Really So Terrific? Trophic Myth and Reality. PLOS ONE. 2013.
[4] Gregg JJ, et al. Lost to science for 126 years: Indigenous knowledge and camera trapping document the critically endangered Otidiphaps insularis. Ornithological Applications. 2026. doi:10.1093/ornithapp/duag074.
[5] Hughes C, Broken-Brow J, Parnaby H, Hamilton S, Leung LKP. Rediscovery of the New Guinea Big-eared Bat Pharotis imogene from Central Province, Papua New Guinea. Records of the Australian Museum. 2014;66(4):225–232. doi:10.3853/j.2201-4349.66.2014.1632.
[6] Crockett DE. Rediscovery of Chatham Island Taiko Pterodroma magentae. Notornis. 1994;41(Suppl):49–60.
[7] Glaw F, et al. Rediscovery, conservation status and genetic relationships of the Malagasy chameleon Furcifer voeltzkowi. Salamandra. 2020;56(4):342–354.
[8] Mynhardt S, et al. Environmental DNA from soil reveals the presence of a “lost” Afrotherian species. Biodiversity and Conservation. 2024;33:31–50. doi:10.1007/s10531-023-02728-2.
[9] Kempton JA, et al. Attenborough’s echidna rediscovered by combining Indigenous knowledge with camera-trapping. npj Biodiversity. 2025;4:19. doi:10.1038/s44185-025-00086-6.
[10] Biton R, et al. The rediscovered Hula painted frog is a living fossil. Nature Communications. 2013.
[11] New Zealand Department of Conservation. Takahe (Porphyrio hochstetteri) recovery plan: 2007–2012.
[12] Heritage S, et al. New records of a lost species and a geographic range expansion for sengis in the Horn of Africa. 2020.
[13] Nguyen A, et al. Camera-trap evidence that the silver-backed chevrotain Tragulus versicolor remains in the wild in Vietnam. Nature Ecology & Evolution. 2019;3:1650–1654. doi:10.1038/s41559-019-1027-7.
[14] Dutson GCL, Magsalay PM, Timmins RJ. The rediscovery of the Cebu Flowerpecker Dicaeum quadricolor, with notes on other forest birds on Cebu, Philippines. Bird Conservation International.
[15] Re:wild. Jackson’s Climbing Salamander rediscovery records. 2017.
[16] Liang CT, Chang SH, Fang WH. Discovery of a breeding colony of Chinese Crested Tern. Oriental Bird Club Bulletin. 2000.
