第3位:イギリスのテムズバリア“水防の砦”
ロンドンのテムズ川を挟み、人々を守る「テムズバリア」。その名称が示す通り、この巨大構造物は、まるで水防の砦として頼もしい存在に思えます。実際、北海からの高波や高潮がテムズ川を遡上し、都市を飲み込むのを防ぐために建設されました。設計時には「これさえあればロンドンの大洪水は怖くない」とまで言われ、都市の安心を約束するシンボルでもありました。ところが、そんなテムズバリアにも、知られざる限界と逆機能が潜んでいるのです。
例えば、バリアの設計思想はあくまで当時(20世紀後半)の気象と海面上昇の想定がベース。潮位の急激な上昇や気候変動、想定外の天候が現実になっている今では、バリアだけでは全ての脅威をカバーしきれないリスクがじわりと浮上しています。実際、公式な行政情報によれば、テムズ・バリアは「仮に毎年8mmずつ海面が上昇したとしても2030年までは耐えられる設計」とされています。しかし、それ以降の持続性や十分性については、不安の声も上がっています。
また、安全への過信も問題を呼びました。「ロンドンはバリアで大丈夫」と高を括る都市政策や住民意識が、河川流域の開発を進めてしまい、逆に危険を呼び込んだ面も否めません。景観の損失、環境負荷といった課題も一部では取りざたされています。そして何より、自然の膨大な力は、人間のいかなる巨大構造物をも簡単に追い抜いてしまう――そんな未来が、じわじわと現実味を帯びてきているのです。ロンドンを守るはずの守護神が、ひょっとすると“逆襲”を始める日が来るかもしれません。
