第2位:ワイヤーカード事件

ワイヤーカードは電子決済を手がけるドイツの金融技術企業で、急成長を遂げて主要株価指数にも採用されました。インターネット上の決済を支える未来企業として評価される一方、利益の一部は、同社が直接事業を行えない地域の提携会社を通じて生まれていると説明されていました。その売上と利益を裏づけるはずだったのが、フィリピンの銀行に設けられたとされる信託口座です。

報道機関や内部告発者が会計処理への疑問を示しましたが、会社側は疑惑を否定し、批判する側を攻撃しました。ところが2020年、監査法人が口座残高を確認できず、会社は19億ユーロが存在しない可能性を認めます。直後に経営トップは辞任・逮捕され、ワイヤーカードは破産手続きへ入りました。

さらに衝撃的だったのは、一企業の帳簿だけでなく、監査や金融監督の仕組みまで長期間機能しなかったことです。革新的な決済企業という看板、複雑な海外取引、銀行の残高確認書が重なり、実在しない現金に現実の信用が与えられていました。巨大企業を支えていた土台は、銀行口座の数字ではなく、誰もがその数字を本物だと思い込む状況だったのです。
