第8位:気象操作プロジェクト — Project Stormfury
まるでSF映画の悪役が夢見るような、「気象を人間の手で操作する」という発想。そんな無謀にも見える計画を、かつてアメリカは本気で試していました。それが、Project Stormfury です。この計画の狙いは、ハリケーンの目の周辺にある雲へ人工的に働きかけ、嵐の構造そのものを変えられないか試すことでした。

具体的には、ハリケーンの外側に新たな雲の輪を作り、それが本来のハリケーンと競合すれば、中心付近の風速を弱められるのではないかと考えられていました。結局、ハリケーンは人工的に少し雲を刺激した程度で思い通りに変わるような単純な現象ではなく、計画は決定的な成果を出せないまま終わっていきます。

一見すると、これは人類が自然災害に立ち向かう夢の技術にも見えます。しかし本当に不気味なのは、この「天候を変える」という発想が、軍事利用とも地続きだったことです。実際、同じ時代のアメリカでは、ベトナム戦争中にクラウドシーディングで雨を増やし、敵の補給路を泥だらけにしようとする気象操作計画も存在しました。

現在では、気象を兵器として使う発想には強い制限があります。国連の環境改変技術敵対的使用禁止条約、いわゆるENMOD条約は、広範囲・長期間・深刻な影響をもたらす環境改変技術の軍事的、または敵対的使用を禁じています。 それでも、嵐や豪雨のたびに「気象兵器ではないか」という陰謀論が出てくるのは、人間が一度本気で“空を操作する”発想に踏み込んだからでしょう。

Project Stormfury の恐ろしさは、人類が自然を制御できると信じ、国家規模でその境界線を越えようとしたこと自体にあります。神の領域に手を伸ばしたものの、現実の嵐は人間の計算をはるかに超えていたことが明らかになるのみでした。Stormfury は、科学の野心と自然の圧倒的な力の差を見せつけた、奇妙で不気味な国家計画だったのです。
