第3位:放射線人体実験 — 知らぬ間に“実験台”にされた人々
もし、自分の体に放射性物質が入れられていたことを、何十年も後になって知らされたら――。そんな悪夢のような人体実験が、かつてアメリカで実際に行われていました。冷戦と核開発の時代、国家は放射線が人体にどんな影響を与えるのかを知るため、医療機関や研究機関を通じて、患者や子ども、囚人などを対象にした放射線実験を進めていたのです。

とりわけ衝撃的なのが、マンハッタン計画に関連するプルトニウム注射実験です。アメリカ政府の調査資料では、患者の中には、自分が放射性物質を注射されたことも、実験対象になっていたことも知らなかったとされる事例が記録されています。しかも、こうした実験は治療目的ではなく、放射性物質が人体内でどう動くのかを調べるためのものだったとされています。

問題は、放射線の量だけではありません。最大の闇は、「本人が十分な説明を受け、納得して同意したのか」という点でした。すべての実験がすぐに深刻な健康被害を生んだわけではないものの、当時の被験者の多くは、自分がどんなリスクを背負わされているのかを理解する機会すら与えられていませんでした。科学の名のもとに、人間の尊厳が後回しにされたのです。

1994年、クリントン大統領は「人体放射線実験に関する諮問委員会」を設置し、過去の政府関与実験を調査させました。その調査では、1944年から1974年にかけて、連邦政府が関与した人体放射線実験が約4,000件確認されています。対象は、プルトニウムなど原爆関連物質の実験、子どもへの非治療的研究、囚人を対象にした研究、核実験に関連する人体影響調査など、多岐にわたっていました。

この計画の恐ろしさは、派手な爆発や秘密兵器ではなく、白衣と病院の中で静かに進められたことにあります。国を守るため、科学を進めるため、という大義名分の裏で、人は知らぬ間にデータとして扱われました。放射線人体実験は、科学が倫理を失ったとき、人間そのものが“実験材料”に変えられてしまうことを示す、現代史でも極めて不気味な国家計画です。
