第5位:1980年 ホリンウェルの集団失神事件

イギリス・ノッティンガムシャーで起きたホリンウェルの集団失神事件は、誰もが平和を楽しむ音楽祭の真っ只中で発生した、“現代の怪奇事件”として語り継がれています。その日、家族連れや子どもたちが芝生の上に集まり、吹奏楽の演奏に耳を傾けながらピクニック気分を味わっていました。しかし、まるで見えない何かが舞い降りたかのように、子どもたちが次々と意識を失い、倒れていきます。広場は一瞬で混乱の坩堝となり、大人たちも何が起きているのかわからず右往左往。救急車が駆けつけ、複数の子どもや家族が搬送される事態となりました。

事件直後、現場には「毒ガスが発生したのでは?」「水や食糧に問題が?」といった、不気味な憶測が飛び交いました。現地の新聞やテレビも連日報道し、市民は不安に包まれます。検査の結果、化学物質や毒の反応は見つからず、原因不明のまま事態は沈静化。ただ、目撃者の証言や当日の写真には、数え切れないほどの人が倒れ、救助される様子が克明に残され「謎」が強調されていきました。

その後、現代医学や心理学の専門家は、いわゆる「集団ヒステリー」=強い不安や緊張が連鎖し、一人が体調不良を訴えると周囲も影響される現象が起こったのでは、という見解を示しました。しかし、特に子どもたちの大集団で発生したこの規模のパニックは珍しく、科学では説明しきれない“集団の心のスイッチ”が押された瞬間といえるでしょう。安全なはずの音楽祭で、そっと現実が裏返る――ホリンウェル事件はいまも恐ろしくも興味深い「人間のこころの謎」として語り継がれています。
