第3位:ヴァローシャ
かつて地中海沿岸最高峰のビーチリゾートとして名を馳せたヴァローシャは、今日、時が止まったかのような異様な姿で人々を惹きつけています。キプロスのファマグスタ地区に広がるこの街は、高級ホテルやショップ、レストランが立ち並び、70年代前半には多くの観光客で賑わっていました。煌びやかな南国の楽園――そんな栄光が、一夜にして消滅することを誰が想像したでしょうか。
その転機となったのが1974年、キプロス紛争です。政治的対立の中で戦闘が激化したことで住民は街を離れ、ヴァローシャは突如「ゴーストタウン」と化しました。トルコ軍の支配下となった後は、有刺鉄線で囲われ、立ち入りが厳しく制限される区域となります。以来、一般市民の立ち入りは原則として禁止され、国連やトルコ軍の監視下で、街そのものが封印されたかのように放置されたのです。
現在でもヴァローシャの街並みには、70年代の看板や当時のままのホテルが生々しく残り、半世紀近く朽ちていく姿はまさに「時間が止まった場所」。その荒廃の中に、壁紙や商品棚すら放置されたままのショップ、空っぽになったプールなど、人々の暮らしの痕跡がそこかしこに見て取れます。有刺鉄線の向こう側に広がる「現実離れしたビーチタウン」は、観光地の面影を残しつつ、今もなお歴史と国際政治の影に覆われているのです。怖いけれど、どうしても目を逸らせない——そんなヴァローシャの不気味な現実は、まさに“世界の奇妙な実在”の証明と言えるでしょう。
